打ち砕かれたプライド

私が開業を始めた頃。

一足先に起業していた弟に誘われ、中小企業の経済同友会という地域の経営者の集まりに参加したことがあった。

その会は、経営に関して著名な講師を招いて講演を行ったり、小グループに分かれて意見交換を行ったりといった事をしていた。

参加者は様々で、個人事業主として一人で活動されている方から、ガバナンスを整え東京まで規模を拡大している方など本当に多様であった。

当の私はというと、少し緊張しながらも一人の起業医師としてプライドを持って参加した。しかしながら、そのプライドもことごとく打ち砕かれたのだった。飛び交う会計用語・経営用語は聞いたことのないものばかりだった。

組織の評価制度・スタッフとの一対一の面談・リーダー制度・スタッフの教育システム・他の経営者が話している事すべてが私の病院にはなかった。

むしろ考えたことすらない項目ばかりで衝撃を受けたのだ。

当時の私の病院にあったものと言えば、開業コンサルタントの方からいただいたスタッフ入退職の際に使用する文書フォーマット5つ・医療理念くらいだ。

業務に関する決まり事など全くと言っていいほど無く、後はそこで働くスタッフの感覚でなんとなくで働いていた。


私はその会に、休診という当時の私にとっては一大決心の元参加していたのだが、そこに居るほとんどの人が、トップが不在でも通常通り業務が回るような体制が整っているとのことでさらに衝撃を受けたことをよく覚えている。

参加している企業は、どこもスタッフの役割分担がしっかりと確立されていた。

というよりむしろその仕組みが整っているからこそ、中小企業は存続し続け得ると聞かされた。

私はまだ、患者を診るだけの医師でしかなかったのだと知らしめられた。

「私が病院を不在にするイコール病院を休みにするしかない」だと思い込んでいた。しかし、トップ不在でいちいち会社を休業するようでは会社として成り立たないのは至極当然のことである。

この会に参加した事が今の私と病院を形成するきっかけとなったのだ。